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CSR/SDGs推進 環境経営支援 2019/07/08

海洋プラスチック問題は、脱プラスチック時代へ流れ着く?

世界中が注目する重大な問題

「海洋プラスチック問題」や「マイクロプラスチック」という言葉を、新聞やテレビのニュース、雑誌の特集で目にすることが増えました。先日開催されたG20大阪サミットでも、「2050年までに海洋プラスチックごみをゼロにする目標を導入する」ことで一致したことが報道されています。
世界全体で日々大量に発生するプラスチック製品が、ポイ捨てなどにより回収されずに河川などを通じて海に流れ込むと、分解されないまま長期にわたり海に残存する「海洋プラスチックごみ」となってしまいます。このままでは2050年までに海洋プラスチックが魚の重量を上回ることが予測されるなど、地球規模での環境汚染が懸念されています。

規制は強まるばかり、メーカーにとっては死活問題

ヨーロッパのみならずアフリカやアジアでも各国でレジ袋や使い捨て食器の規制が進む中、日本でもG20に先立って、2019年5月末日に「プラスチック資源循環戦略」を打ち出し、2030年までの目標として、ワンウェイプラスチック25%排出抑制、容器包装の6割をリユース・リサイクルなどの計画が示されています。

もはや、脱プラスチックの流れは止まらない状況となっています。近い将来、プラスチックは大量生産・大量廃棄、使い捨ての象徴にされてしまうかもしれないと感じるほどです。世界は、使い捨てプラスチックの使用量を減らし、使う場合は生分解性素材という「脱プラスチック社会」に切り替えるタイミングをはかっているように見えます。
この世界的な脱プラスチックの流れは、様々な業界や企業の経営に大きな影響を与えるものです。使い捨てプラスチックを大量に消費する飲食店、容器包装にプラスチックを使う食品や一般消費材メーカー、そして特にプラスチックを製造する化学メーカーにとってはまさに「死活問題」に他なりません。

ポジティブに捉えてみると...

しかしながら、この脱プラスチック化をポジティブに捉えることも可能です。一市民の目線で言えば、脱プラスチック化を「使い捨てをやめて、モノを大切にする社会をもう一度つくる」と解釈すると、希望を持って前向きに変化を受け入れることができませんか?
同じように、これまでの事業からの大転換を求められる脱プラスチック化は、ビジネス主導の技術革新を促して、「環境と成長の好循環」や「新しい価値」を生み出すチャンスであると前向きに捉え、対応を始めている企業も多くあります。

ここ最近、お聞きしたお客様の声を紹介します。
あるプラスチックメーカーの方からは、自社の事業の根幹にかかわる脱プラスチック化の流れに際して、「我々は、発想を転換し、フィルムや包装を「使わないで」お客様に価値を提供する新しいビジネスを立上げ始めている」と、力強いお声を聞きました。
また、ある一般消費材のメーカーでは、「当社の製品はすべてプラスチック容器に入っている。使用後の製品がポイ捨てされて海に流れ着けば、間違いなく海洋プラスチックごみとして長年にわたり海をさまよってしまう」との危機感をもった経営層から、早急な対策を行うように号令が出たそうです。ご担当者から、「自社だけでなく、廃棄などライフサイクル全体の視点で捉えなくてはならない問題だと実感している」とのお話をお聞きすると、拡大生産者責任が法規制を超えて広がっていることを肌で感じます。これは、とてもよい兆しです。ライフサイクル思考で環境に配慮したデザインをすることに価値が認められるようになれば、企業は自ずから変化していきます。

「脱プラスチック社会」はどんな社会?

大きなリスクこそが新しい技術やサービスを生み出す契機となる、というのがビジネスの常。従来のプラスチックに代わるのはどんな技術やサービスでしょうか。
まず、生分解性プラスチックはもちろんのこと、紙や木等の自然素材への代替が進んでいくことが考えられます。そして、昔は当たり前だったしょうゆやみその量り売りや野菜・果物の裸売りなどパッケージレスが普及することも予想されます。「パッケージ」や「売り方」そのものが脱プラスチックの方向にガラッと変わっていくかもしれませんね。

Writer 代表取締役所長 浅井豊司