SDGs時代の生存戦略
気候が不安定な状態が止められない?
環境問題は年を追うごとに深刻さを増しているといえます。異常気象は1980~90年代に比べ2000~2010年代に2倍に増えています。
異常気象が増えている原因のひとつに気候変動があります。2100年には温室効果ガスの排出を実質的にゼロまたはマイナスにしなければ、気候が不安定な状態が止められなくなるといわれています。
しかし、私たちが呼吸を止めてCO2をなるべく吐き出さないようにしようとしても無理なように、いますぐ大きく世界を変えることはできません。
家庭から排出されるCO2の半分は電気の使用によって発生しているといわれますが、省エネ機器を揃えて無駄な電気を使わないようにしても、使用量を半減させることは相当に難しいでしょう。しかも目指すのは「ゼロまたはマイナス」です。個人の自主的な努力でそのレベルを達成するのは不可能に思えます。
「社会の変化を後押しする」という方法
ところが、例えば供給される電力のうち再生可能エネルギーの割合が増えれば、化石燃料を使用して発電する分のCO2は減ります。また、ガソリン車から発生するCO2は全体の2割を占めますが、これも電気自動車に変えて再生可能エネルギーを利用できれば、その分のCO2は削減できるのです。
つまり、個人の自主的な努力はもちろん必要ですが、それよりも社会の変化を後押しすることのほうが大切だ、と言えます。この気候変動に立ち向かって行く変化は、ネガティブに捉えずに、ポジティブに捉えたほうが良いでしょう。「限界を超えて無理をしてでも自主的な努力でCO2をゼロにしなければならない」とか、「電気を使うことに罪悪感を覚える」などと考えるのはやめましょう!
電気自動車が増えれば、幹線道路や都心で排ガスによる大気の汚れが少なくなり、空気がきれいになります。「私たちはポジティブな変化のなかにいる」と考えたほうが明るい未来に向かって進んでいけるのではないでしょうか。
SDGsを企業の生存戦略策定に使う
そういう時代の転換点において、企業が生き残るためには将来のあるべき社会を設定して、それに向かってイノベーションすること以外にありません。
これまでは将来のあるべき社会像を定義することは容易なことではありませんでしたが、SDGsが2030年の世界のあるべき姿を提供してくれるようになりました。「SDGs(持続可能な開発目標)」とは、2015年の国連サミットで採択された2016年から2030年までの国際目標です。「貧困をなくそう」「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「つくる責任 つかう責任」など、持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成されています。近頃よく見かけるカラフルなリングは、17色でSDGsの17のゴールを表現するもの。国や国際機関に限らず、多くの企業がビジネスを通したSDGsへの取り組みを始めています。
SDGsと、未来に視座をおいて長期的な方向性を組み立てるバックキャスティングという手法とを組み合わせれば、どの企業においても生存戦略をつくりやすくなったと言えます。
フルハシ環境総合研究所が得意としているワークショップ型の教育プログラムのなかに、SDGsをテーマにした研修・コンサルティングのメニューを加えて提供をはじめたところ、思った以上の反響をいただいています。社会課題の解決と事業の発展を両立させることは簡単なことではありませんが、SDGsのフレームワークを活用すれば思っているより壁は低いかもしれません。SDGsの導入に足踏みをしている企業には、ぜひ勇気を持って一歩踏み出していただきたいと思います。
Writer 代表取締役所長 浅井豊司